この記事の執筆時点ではITベンダに勤めているが、コンサルティングファームへの転職を考えて活動したときの話し。
この活動はうまくいき、結果的にコンサルファームへの転職を決めた。
(この後の話しは「コンサルティングファームに転職したその後(本の紹介)」も参考に。)
また、年収の変遷は「中小企業から大手SIer、コンサルティングファームへの変遷記(転職活動記)」に記載した。
動機・期待
コンサルティングファームへの転職を考えた動機はいくつもある。
- 現職はSIがメインの会社であり、成果主義とは名ばかりで、効率良く仕事するよりも時間を掛けて残業代をつけたほうが稼げるモデルである
- 自分は残業代がつかないポジションである
- SIがメインの会社であり、長くそこに携わってきたが、現時点での自分は少数派であるコンサルティングを主に担当している
- 現職の提供するコンサルティングサービスとSIサービスでは販売単価がかなり違うが、当然ながら給与水準は社内共通であり、そこで差がでない
- 自社のソフトウェア製品をどれだけ売るかがKPIの大きな部分を占めており、コンサルティングの活動内容もそこに少なからず捻じ曲げられる
- 能力の高い一部のメンバがRFP回答を担い、その他の多くのメンバはそれ以降のフェーズのみを指示ありきで担当するように自分は感じており、社員全体のレベルに少なからず不満を感じる。例えば方法論や経営戦略などについての議論をして切磋琢磨できる環境に身を置きたい。(SIerの中でもレベルの高い会社であるとは思っているが。)
- 給料の飛躍的なアップが望めない。(本部長クラスになっても1,200万程度か。)
- 新たな環境で自分の能力を試したい。
- RFPの回答以降のフェーズを担当することが主な仕事であり、それより上位の仕事にも携わりたい。
そんな動機により、今までやってきてとても面白いと感じていたコンサルティングを主とする、コンサルティングファームへの転職を考えた。
対象は戦略コンサルティングではなく、ITコンサルティング。
コンサルティングファームに期待する主なことは以下。
- 優秀な社員が多く、建設的で刺激的な議論に溢れていること
- 製品開発や製造などが無いために投資は主に人材に対して行われ、社員に対する報酬の水準が高いこと(つまり給料の飛躍的なアップ!)
- 経営に直結するポジションのお客さまを相手にして理論を構築する、個人としての能力を求められる刺激的な仕事であること
- 今まで以上に成果主義であり、PJの合間には長期休暇が取れること
- 個人の能力を高めることにより、市場価値を高めることに直結し、今後のキャリアの展望も広げることができること
転職エージェント・応募企業選択フェーズ
ということでコンサルファームへの転職を決意したが、今までの経験から思いついた転職の手段は以下。
- 企業への直接応募
- ビズリーチなどの転職サイトを介した応募
- 転職コンサルタントを介した応募
今までに転職コンサルタントを利用したことはなかったが、多少なりとも畑が違う(SIerではない)会社への転職ということもあり、その道の専門家に相談しながらが良いと考えて転職コンサルタントを利用することにした。
そこで、コンサルティングファームに強そうであり、かつ会社の理念に共感できた、「JACリクリートメント」という会社に相談することとした。
結果的にJACにお願いしたことは正解であり、仮に今後また同じように転職する機会があれば、間違いなくJACにお願いすると思う。
それくらいの効果と、信頼感を得ることができた。
JACのエージェントとは一度だけ顔を合わせてみっちりと話し合った。
転職動機や、それと表裏一体だが何をしたいのか、希望条件、自分の能力などを。
とても頭が良く話しやすく、元々持っていた転職エージェントのイメージは「求人を持っていること」だけが強みであり、一旦応募フェーズを過ぎてしまえば、その後のサポートなどで自分が得られるものはほぼ無いだろうと考えていた。
しかし実態は全く異なり、各社の特色、検討のポイント、面接準備へのアドバイス、先方からの情報収集、日程調整、条件面の交渉、応募者の強みの強調など、考えてもいなかった付加価値を備えていた。
今回の転職活動の結果はJACと一緒でなかったら全く違うものになっていた可能性が高い。
JACのエージェントと相談しながら決めた応募企業は以下の5社。希望するタイトルは全てマネージャ。
- アクセンチュア(業界別組織)
- EYアドバイザリー(機能別組織)
- PwCコンサルティング(業界別組織)
- KPMGコンサルティング(機能別組織)
- その他X社(機能別組織)
書類選考・面接フェーズ
履歴書・職務経歴書を書き、JAC社を通じて5社へ応募をした。これらの書類は5社とも全て同じものを使った。
履歴書についてはとても寂しいもので、学歴もしょぼいし資格は普通運転免許のみ、TOEICは受けたことがない(受けても400点程度か。)という状態。
その代わりに職務経歴書は響くものにしたつもり。記載内容は当然事実を書くが、全面に押し出す内容の選択と、表現の仕方を考慮した。
結果、無事に5社とも書類選考は通過し、面接へ進むことができた。
最終的な結果は以下の通り。
企業 | 書類選考 | 一次面接 | 二次面接 | 最終面接 |
アクセンチュア | ○ | ○ | なし | ○ |
EYアドバイザリー | ○ | 敗退 | ||
PwCコンサルティング | ○ | ○ | ○ | ○ |
KPMGコンサルティング | ○ | ○ | なし | 敗退 |
その他X社 | ○ | ○ | なし | ○ |
ちなみに、コンサルティングファームのマネージャとしてというより、
企業で働くマネージャとしての素養を身に付けるために、私は「ハーバードビジネスレビュー」という本を読んでいる。
特に、以下の「マネジャーの教科書」については目にウロコで、既にマネージャのかた、マネージャを目指すかた、
上級マネージャとして新人マネージャを統括する立場のかた、それぞれにお勧めです。転職の如何に関わらず。
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面接内容
このページを見ているほとんどの人は、面接内容がどんなものだったかを知りたい人だと思うので、面接内容を記しておく。
※内容は基本的に面接官の質問内容。()内は質問内容ではなく面接官の説明。
アクセンチュア
アクセンチュア(一次) | |
ポジション | コンサルタント(業界別組織) |
面接官 | シニアマネージャー |
概観 | 全体的におおらかな雰囲気で、話しがとてもスムーズに進み、楽しく充実感のある時間だった |
内容 | (会社の部門構成の説明) |
あなたのできることは何か | |
何故アクセンチュアなのか | |
現職で求められているミッションは何か | |
セールス目標が設定されることは許容できるか | |
能動的に動かなければならない文化を許容できるか | |
セキュリティについての知識はあるか | |
忙しさの上下が激しいが許容できるか | |
急に別カテゴリの仕事を振られることは許容できるか | |
直近3年以内に病気などで2週間以上休んだことはあるか | |
英語はできるか | |
提案書は書けるか |
アクセンチュア(最終) | |
ポジション | コンサルタント(業界別組織) |
面接官 | ディレクター |
概観 | 実務に詳しく、知的、かつパワフルで、一緒に働きたいと思えるかたであった。 |
内容 | 自己紹介を |
担当していた分野のアーキテクチャを世界標準のリファレンスアーキテクチャとの比較も分かるように図に描いて説明して欲しい | |
※上記の話しとそこから派生した枝葉の話しに殆どの時間を費やした | |
(当社はとても働きやすい環境でありお勧めである) | |
他社の選考状況はどうか |
PwCコンサルティング
PwCコンサルティング(一次) | |
ポジション | コンサルタント(業界別組織) |
面接官 | ディレクター |
概観 | 鬼気迫る迫力と、その裏にある優しさを感じた |
内容 | コンサルタントとは何か |
今までの経験をゼロリセットすることができるか | |
最も詳しい業界について、その業界の課題、他国と比べた状況、日本における政治的な背景、技術的な展望を教えてくれ | |
※上記の話しとそこから派生した枝葉の話しに殆どの時間を費やした | |
(PwCの組織の説明と今後の展望の説明) |
PwC(二次) | |
ポジション | コンサルタント(業界別組織) |
面接官 | シニアマネージャ |
概観 | とても優秀なかたで、カバーする領域の広さ、深さともに驚くほどであった。 |
内容 | (面接官による自己紹介) |
お客さん、自組織、プロジェクトメンバとの関係と、自分に課せられたミッションを踏まえて自己紹介をして欲しい | |
得意なアプリケーションはあるか | |
得意な領域は何か | |
今までのアプローチを捨てて、新たな思考にチェンジすることができるか | |
出張は可能か | |
過酷なプロジェクトをリードする際に最も大事にしているポイントはどこか | |
メンバ育成についてどのように今まで関わってきたか | |
パフォーマンスの低い社員にどう対応するか | |
PwCがあなたを知ることは必要だが、あなたもPwCを知らないといけない。質問はあるか | |
希望年収は |
PwCコンサルティング(最終) | |
ポジション | コンサルタント(業界別組織) |
面接官 | パートナー |
概観 | 全体的にイージーな面談だった |
内容 | 今までのプロジェクトでどんなポジションを担ってきたのか |
得意なアプリケーションは何か | |
得意な領域は何か | |
何故コンサルティングなのか | |
何故PwCなのか | |
質問はあるか |
KPMGコンサルティング
KPMGコンサルティング(一次) | |
ポジション | コンサルタント(機能別組織) |
面接官 | ディレクター |
概観 | コミュニケーション能力に優れ、柔和なかただった。全体的に楽しい場であった。 |
内容 | 募集の背景はエージェントから聞いているか |
(希望する人材の説明) | |
何故このポジションなのか | |
KPMGに入って何ができるか | |
年間幾ら稼げるか | |
その金額の根拠は | |
資格を取るつもりはあるか | |
何故今まで資格を取っていないのか | |
希望年収は | |
その金額の根拠は | |
英語はできるか | |
他に受けているところは | |
質問はあるか |
KPMGコンサルティング(二次) | |
ポジション | コンサルタント(機能別組織) |
面接官 | ディレクター |
概観 | 全体的に人間味を感じられる場面が無かった。話している内容に理論上の抜けが少しでもあればそれを突いてくるというスタイルであった。 |
内容 | 自己紹介を |
何故このポジションなのか | |
何故KPMGなのか | |
得意な領域は何か | |
その領域にどうやってこのポジションで提供するサービスを活かしていくのか |
その他X社
その他X社(一次) | |
ポジション | コンサルタント(機能別組織) |
面接官 | シニアマネージャ |
概観 | 他社とは違い、面接官の裁量に任せた質問ではなく、予め決められた質問内容のルールブックを見ながらの質問だった。 |
内容 | (面接官による自己紹介) |
自己紹介を完結にお願いします | |
職務経歴書に記載されている強みについての具体的な質問 | |
今までで最も大きかったSalesの規模は | |
自分が管理したメンバ数で最も大きかったものは | |
職務経歴書に記載した事項への具体的な質問 | |
今までのSalesへの関わり方はどのようなものか | |
扱ったDBMSの種類と関わり方は | |
育てた後輩は現在どのようになっているか | |
残業時間の平均と最大は | |
残業時間が多い時期が続いた際のストレス解消法は | |
Webサービスのシステム構築も行ったことがあるか | |
何故コンサルタントなのか | |
他社の選考状況は | |
何故当社なのか、他社と比べても当社なのか | |
非機能と機能のどちらが得意か |
その他X社(最終) | |
ポジション | コンサルタント(機能別組織) |
面接官 | ディレクター |
概観 | とても人間味があるかたで、且つ説明に論理が成り立っており、強い魅力を感じた。 |
内容 | 転職の動機を教えて欲しい |
どんなコンサルティングをしたいか | |
※その後、標準的な面接と全く異なり、面接官と私で、仕事に対する理想と現実、課題などに対する会話がずっと続くという場だった。 |
最終選択・感想
最終的にはその他X社へ決めた。(面接の中で受けた)社風・会社から自分への期待度・待遇が決め手となった。
5社の面接、計8回+オファー面談3回を受けるのは大変疲れた。
面接毎に各社の分析をし、自分が何故そこに行きたいのか、会社にとってどんなメリットがあるのかを熟考することと、何を聞かれるか分からない場に赴くことへの不安、失敗したらどうしようという恐怖が1ヶ月以上続いたために大変疲れた。
また、その間も仕事は当然しなければならず、時間に追われる毎日だった。
結果的には希望の通りになったため今では良き思い出と化しつつあるが。
この(自分で選択してはいるが)過酷な活動のあいだ、JACのエージェントとはほぼ毎日のように電話していた。
各面接結果の連絡、応募企業人事担当を介した面接官からのフィードバックの連絡、現時点の意向はどこに向いているかの話し、私からの質問、各種調整など。
事務的なサポートや面接に向けての戦略の相談、あとこれが一番重要だったかも知れないが、一人で闘っているわけではなく、エージェントと一緒になって闘っているような気になって、孤独感や不安感などがかなり緩和されたように思う。
また、実はこの転職活動で最もサポートしてくれたのはJACのエージェントと並んで妻だった。
同じように面接を受けるかたへ
偉そうに講釈をたれるというわけではなく、自分はこうした、こう捉えたということを記しておく。
- 今までの仕事で自分が携わった最も深く、大きく、長いプロジェクトにおいて、そのPJはどんな業界の中のどんなポジションの企業が、何を目的にしているもので、自分はそのPJの中でどんな役割でどう貢献したのか、何故その貢献ができたのかをしっかり筋道を立てて他人に説明できるようにしておくことが重要である。
- 面接での質問に対しては焦らずに一息おいて、面接官の質問へ簡潔に的確に答えることが重要である。相手は大抵、頭が良い。曖昧だったり的を得ていない回答でごまかすことはできず、質問に対する具体的な回答を持っていない場合には「分かりません。しかし私としてはこう考えています。」のような答えでも良い。
- 面接官は応募者に対して、「経験」「能力」「意欲」があるかを見ている。特に難しいのが「意欲」であり、何故コンサルティングをしたいのかを、きちんと論理的に組み立てておく必要がある。
- どんなに準備をして臨んでも、面接は「お見合い」のようなものであり、面接官との相性というものが大きな部分を占めると思う。全然噛み合わなかったりもすると思うし、そんなときは思い詰めずにさっぱりと諦めて、次に気持ちを切り替えたほうが良い。
それにしても思い出しただけで疲れてくるような経験だった。
ちなみに、私を担当してくれたJACのエージェントと相談したい場合は、JACへコンタクトし、このブログのURLを伝えて、この人(私)を担当したエージェントを探しているのですがと話せば、分かるのではないかと思います。
また、年収の変遷は「中小企業から大手SIer、コンサルティングファームへの変遷記(転職活動記)」に記載したので参考にしてください。
しつこいようですが、「マネジャーの教科書」については、既にマネージャのかた、マネージャを目指すかた、
上級マネージャとして新人マネージャを統括する立場のかた、それぞれにお勧めです。転職の如何に関わらず。
ご一読されると将来が少なからず変わってくるかと。
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以上。